2015年10月2日

運動習慣は、転倒回数を減らし、またうつ状態を軽減するか?

 地域の老人クラブ会員を調査対象として、日々の運動習慣の程度と転倒回数とうつ傾向について調査した。本調査は、同一の対象者に約1年の間をおいて2回実施された。初年度(2012年度)の調査対象者の内訳は、女性で783名(49.9%)、男性785/名(50.1%) の合計1,568名であった。年齢区分別にみると、女性で60歳代183名(23.3%)、70歳代445名(56.8%)、80歳代155名(19.8%)であった。他方、男性では60歳代166名(21.1%)、70歳代485名(61.8%)、80歳代134名(17.1%)であった。このように、対象者の男女内訳は、ほぼ半々の割合であり、また両性ともに70歳代が全体の約6割であった。対象者の母体は、神奈川県政令指定都市S市老人クラブ連合会の全面的協力により、傘下の全286単位クラブから各6名(男女半々)ずつの会員に調査票を配布した。結果、配票数1,716票のうち、1,568票が郵送と個別の持参の方法で回収された。(回収率91.4%)。その調査の結果の一部の概要を紹介する。

 運動習慣と転倒

 継続的に定期的な運動習慣を持っている「TTMのステージ:実行期・維持期)の人で、過去1年間に3回以上転倒した人の割合は、男性で9.6%、女性で7%であった。一方、運動を行っていない「 TTMのステージ:関心期・無関心期」の人で、過去1年間に3回以上の転倒者が男性で19%、女性で18%であった。このように運動を定期的に実施している人たちと実施していない人たちとでは、年間に3回以上転倒する頻度が2倍以上の差があった。 また、調査の初年度に、過去1年間に転倒しなかった(転倒回数・0回)人の中で、調査2年目(2013年度)においても転倒回数・0回の人の割合は、男女ともに年代があがるにつれ、その割合は減少していた。特に80歳以上では、男性で5割、女性で約6割に減少していた。高齢になるほど、普段の生活の中で、転びやすくなっていることが、これらの結果に表れている。健康日本21に関する国の調査結果を見ると、要介護状態になる原因のなかでも、その約1割が「骨折・転倒」である。日頃の生活で、足腰を鍛える身体活動に心掛けることが必要である。

 運動習慣とうつ

 次に運動習慣の程度と「うつ傾向」との関連を見た結果、運動習慣の「実行期・維持期」にある人たちの中で「うつ傾向」のある者の割合は、男性で18.1%、女性で19.9%であったが、他方、運動に「関心期・無関心期」にある人たちの中で「うつ傾向」のある者の割合は男性で32.9%、女性で43.8%であり、両者には男女ともに約2倍の差がみられた。うつ状態を軽減する生活術として、身体活動を活発におこなうことは効果があるようだ。

(出典:平成23~25年度科学研究費助成事業:文部科学省学術研究助成基金・基盤研究C(課題番号:23500701)―生活場面における運動に関するアンケート調査報告書[東海大学健康科学部・谷口 幸一、文化学園大学・安永明智]