最近、「ブラックバイト」という言葉が世間を賑わせている。もともと「ブラック企業」という言葉があり、これは長時間労働や残業代未払いなどの悪い労働環境にある企業を指す言葉で、従来は主に正社員が被害に遭うとされていた。ところが、企業の人件費抑制方針により、派遣社員やアルバイトなどの非正規雇用が増大し、彼らにも違法なサービス残業や賃金未払いなどの皺寄せが行くようになり、「ブラックバイト」などと騒がれるようになった。
ブラックバイトに関しては、例えば次のような問題が報じられている。仙台市のバーでアルバイトをしていた男子学生は、次第にほぼ毎日の勤務を求められるようになった上、7か月分の賃金が支払われず、さらに赤字の補填を強要され、「売り上げが少ない」と暴力を振るわれていたという。男子学生は経営者に対し、未払い賃金の支払いを求める訴訟を起こしている。また、某飲食チェーン店では、男子学生が4か月間毎日12時間勤務をさせられた上、一部の賃金が未払いで、ミスにより商品購入を強要され、「殺してやる」などと恫喝され、退職の申し出に4000万円の損害賠償請求を示唆された。男子学生は鬱病を発症し、大学の単位も取れなくなってしまったという。
このような問題に対して、「辞めればいいではないか」という声もある。しかし、パワハラや暴力、契約書による支配、損害賠償などの金銭請求といった「職場の論理に従属させる人格的支配」が行われ、さらに貧困により学費を稼がなければならないという事情も重なり、簡単には辞められないのである。
ブラックバイト問題は、当事者一人で解決するのは困難である。もしこの問題で困っていたら、家族、友人、大学の教職員や、ブラックバイトユニオンといったNPO法人などに相談することをお勧めする。(鈴木聡志)