『ちょっと意外な結果かも。関東圏の大学生は、5割強が高齢者と交流したいと考え、6割強が親孝行は話し相手になることと回答―――。こんな実態が東海大のグループが実施したアンケート調査で分かった。』」この見出し文は、OVO(オーヴォ)が敬老の日に先駆けて9月13日に配信した記事である。http://ovo.kyodo.co.jp/ch/mame/a-625849
調査は、同大学健康科学部社会福祉学科の谷口幸一教授らが、関東圏の大学に在学する3,4年生1064人(男子368人、女子696人)を対象に親の扶養意識と高齢社会に対する関心度、老いのイメージなどについてアンケートした。」(原文)
その記事に、原著の報告論文から関連する結果を、以下に追加で紹介したい。
①高齢者と世代間交流をしたいと回答した学生が53.8%に上り、交流したくないとした3.7%を大きく上回った。どちらでもよいと回答したのは42.6%だった。他方、スリランカのコロンボ市内・近郊の国立大学に在学する3,4年生600人(男子229人、女子371人)を対象に同質問に対する回答を求めた結果、高齢者と世代間交流をしたいと回答した学生が68.8%に上り、交流したくないとした3.0%を大きく上回った。どちらでもよいと回答したのは30.7%だった。
②親孝行について複数回答で聴いたところ、「親の話し相手になったり、親と頻繁に交流すること」が64.8%とコミュニケーション型が最も多く、次いで「自分が自立し、親に心配かけないこと」の59.2%、「親の身の回りの世話をしたり、看病すること」の18.7%が続いた。他方、スリランカの学生は、「親の話し相手になったり、親と頻繁に交流すること」が47.7%とコミュニケーション型が最も多く、次いで「親の身の回りの世話をしたり、看病すること」の45.2%、と直接の介護を担う意識も同様に高く、「自分が自立し、親に心配かけないこと」の13.0%、「親を経済的に扶養すること」3.8%の言わば遠隔的な親孝行意識は少なかった。両国で明らかな違いが認められた。
③日本の高齢者問題については「相当深刻である」と79.2%が回答、「よく分からない」としたのが20.1%、「全然問題ではない」としたのが0.7%あった。他方、スリランカの学生は、「相当深刻である」と51.7%が回答、「よく分からない」としたのが44.0%、「全然問題ではない」としたのが4.3%あった。両国の高齢化率の相違が,回答割合に反映している結果であった。
④年とった親が施設に入所することについては、「できるだけ施設入所は避けたい」が46.5%、「家庭での介護が無理だから、そうせざるを得ない」が39.8%、「あまりよく分からない」が11.2%、「親不孝である」が2.4%だった。他方、スリランカの学生は、「できるだけ施設入所は避けたい」が62.8%、「家庭での介護が無理だから、そうせざるを得ない」が3.2%、「あまりよく分からない」が9.7%、「親不孝である」が27.0%だった。施設に入所することを、親不孝と考える割合に、両国で10倍以上の差異がみられ、親孝行の意味内容に大きな違いが認められた。この調査に興味のある読者は、以下の報告論文にアクセスしてみて下さい。
(出典: 大学生の親扶養意識と高齢社会に対する関心度ならびに老いのイメージに関する2国間比較研究、東海大学健康科学部紀要 第20号89-102、2014) (担当・谷口)