2016年3月25日

一通のブログが国をも動かす事態に



 20152月のとある日、一通のブログがインターネット上で話題になった。それは、はてな匿名ダイアリーというサービスに投稿された「保育園落ちた日本死ね!!!」という、少々過激なタイトルのブログである。その内容は、子供が保育園に入園できず、会社を辞めなければならない可能性があり、一億総活躍社会などと言っておきながら自分は活躍できない、というものが、やや乱暴な表現ながらも悲痛な思いで書かれていた。
 このブログはネット上で瞬く間に多くの共感を呼んで話題になり、テレビや新聞などのメディアでも取り上げられ、遂には国会の場でも取り上げられるまでに至った。その際に、安倍晋三首相は、ブログが匿名であることを理由に「内容が本当かどうか疑わしい」という答弁をし、自民党の他の議員は「死ね!という表現は女性らしくない」というコメントをしていたが、問題の本質はそこではないという批判を浴び、政府も参院選を前に真摯な対応を迫られることになった。
待機児童問題は、ここ十数年ほど社会問題として取り上げ続けられているが、一向に改善の兆しが見えていない。その要因としては、共働きの家庭が増えたこと、人口が都市部に集中しすぎて保育園が不足していることなどが挙げられるが、大きな要因としては、保育士の待遇が悪いことが挙げられる。保育士は決して簡単ではない国家資格だが、給与は一般の会社員に比べてかなり低く、その社会的地位は決して高いとは言えない。そのために保育士のなり手が少なく、保育園がなかなか増えないという状況になっている。
保育園の運営は公的な補助の割合が高いため、保育士の待遇改善のためには、国の支援が必要不可欠である。そのためには財源の捻出が必要になるが、高齢者に一律3万円をバラ撒くなどの政策をやめれば、不可能ではないはずである。若年者は高齢者に比べて選挙の投票率が低いため、政治家が子育て世代のほうを向いていない。インターネットなどで声を上げるだけでなく、選挙などでも意思表示をすれば、少しずつでも社会を変えていくことはできるはずである。(鈴木聡志)