2016年2月20日

男性高齢者は、地域活動に積極的になれるか?

 家から出て地域の活動や催しに参加するとき、人は誰しも不安と期待を持つ。不安とは、自分が、新たな集団の中で、自尊心を低められる扱いを受けるかも知れないという懸念に由来する。期待とは、自分の自尊心を高められる扱いを受け、歓迎されるのではないか、相応の役割を与えられるのではないかという希望的観測に由来する。全く知らない初めての集団では、その正負の感情が錯綜して、何の懸念もなく地域活動に参加する勇気が持てないのだ。長年の人生経験を経た高齢世代ほど、様々な集団での辛苦を舐めているので、どちらの扱いを受けるか懸念して、すんなりと新たな集団に入っていけないのだ。社会的情動的選択理論が適応される所以である。この理論は、老年期では対人的な交流が量的に減少するが、質的に深く親密な交流を少数の他者と結ぶことで、幸福感を保つという個人の適応の視点から捉えた考え方である。快い感情を引き起こす場面や対人関係は好まれて、不快の感情を引き起こす場面や対人関係は避けられるという態度に帰着する。
 地域とは、現役時代の名刺が役立たない社会、女性が元気で活躍している社会、上司・部下の関係が成立しにくい社会、新たな思考の柔軟性が求められる社会であり、男性退職者にとっては、新たなストレスを生む世界であることは間違いありません。この世界に馴染む勇気が求められていますね。(第二分野のコラム:地域にでる勇気、谷口)