親族が、その親の財産を勝手に処分したとか、弁護士が後見人として契約を交わしている依頼人(被後見人)の財産を不当に処分したとか、最近のニース報道でも良く耳にする。その背景には、認知症や知的・精神的障害などで、財産管理や身上の監護が自力で行えなくなった人の利益・尊厳を守るために、成年後見制度(2000年.4月施行)が位置づいている。その法的根拠として、老人福祉法第32条によって、市町村長は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」について家庭裁判所に対し後見審判の請求をすることができるとされている。同様の規定は知的障害者福祉法や精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にもある。
この市町村長申立てのさらなる活用を求めて、従来からの親族後見人や専門職後見人のみで行われている後見人活動の不備を補うために、2012年に老人福祉法第32条の2が創設され、市町村は、後見、保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとすることになった。研修の実施、後見等の業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦、研修を修了した者を登録する名簿の作成や市町村長が推薦した後見人等を支援することなどである。市町村の責任において後見実施機関を設置し、市民後見人を養成・活用・支援する仕組みを確立していくこととなった。地域で信頼される市民後見人の育成が時代の急務になっている(地域ケア政策ネットワーク代表理事・大森彌,2013)。
筆者がその会員として参画している「非営利活動団体・成年後見さがみはら市民センター」(同代表・千葉芳弘、2015)でも、市民後見人を志望する市民を対象にした市主催の養成研修に協力する体制を整えるべく、日々、勉強を続けている。(谷口)