2015年8月21日

退職シニア層を中心とした地域住民と大学生との多世代交流活動―地域連携型教育の意義とは何か?



何かを学ぶだけなら、カルチャースクールや近所の公民館でも良いが、「大学」というキャンパスの雰囲気が、退職シニア層に学習意欲や参加意欲を駆り立てるのだ。人生経験を重ね、仕事で培った技能・知識と社会的問題解決能力を蓄えた知恵に満ちたシニア層が、学生を前にして”教壇”に立つとき、しばらく心の奥に沈み込んでいた生の息吹を感じ、生きがいに繋がるのだ。但し、その時に必要な訓練があると言われる。教え方の研修が必要ということである―自分の過去の自慢話や武勇伝は嫌がられる。学生が好むのは、ディスカッション形式の講義である。議論を通じて世代を超えた交流がお互いの心地よい刺激となる。

 筆者は、大学が全学的に推進する地域連携教育の一環として、学部の学生と地域住民(退職シニア世代)との「人生を考えるワークショップ」(2コマ)を実践した。テーマは、「人生と仕事」、「人生の目標・ビジョンと夢」であった。まず学生が個別にこのテーマについて自分の考えや疑問を発表し、それに対してシニアが、逆に質問したりコメントを加える形式で進行した。大学での学びが今後の仕事や人生目標・夢にどのように関わるかを考えながら、学ぶことの大切さを実感していた。その後に行った野外での合同のレクリエーション活動で、お互いが友達になった。笑いに満ちていた。
―このような世代間交流を通じて、退職シニアもさらに元気になってきた。退職シニアは、フルに働く必要はない。若い世代とふれ合い、有難うと言われる実感が重要である。全くの無償ボランティアではなく、僅かでも謝礼を貰えるような有償のプチ就労が良く、それも若年層をサポートする中で、自己有能感が高まるような”仕事”が良いようだ。そのような活動の格好の場は、大学である(谷口)