2016年2月20日

学生と高齢者の世代間交流


 2015年度筆者の勤務する大学の講義の一環として、地域の高齢市民(15)と、大学生1年生~4年生までの学生たち(56)とが、「人生を語る」の大テーマで、計5回のワークショップ(WS)形式の交流を行った。
 WSは高齢市民と大学生の双方から「テーマを出し合う」形で進行した。
 その1は、学生は日ごろの生き方の疑問や悩みを高齢市民に問いかけ、それに対して高齢の参加者が自らの人生経験をもとに、各質問に対する考えを述べる形で進行した。
若い世代の問いかけのテーマは、「自分たち若者は、将来年金をいくらもらえるのか」、「健康維持の秘訣とは」、「仕事と趣味の両立の仕方とは」「結婚の決め手とは」、「将来のための貯蓄額はどのくらいか」「就職を有利に進めるには」「学生のうちにやっておいた方が良いこと」「高齢者にとっての福祉とは」「今の若者をどのように見ているか」「苦手なコミュニケーションの克服法」「食事費の切り詰め方」「ストレス対処法」「地域の知り方」などであった。
 その2は、高齢世代が人生の転機となった出来事(ライフイベント)を、若者世代に語り、それに対して参加した学生から、さらにその内容について問いかける形で進行した。
 学生の感想としては、高齢者の方々と日ごろ接する機会が少ないので、将来に対する漠然とした不安を抱いていたが、個々の疑問に真剣に対応して貰ったことから、今後の生き方に前向きになれたという感想が見られた。他方、高齢者の方からは、日頃は若者世代と接する機会がなかったが、このような機会に参加できて、若い人の悩みの一端に触れて、彼らの生き方に些かでも助言ができたことは嬉しかったとの感想が聞かれた。言葉や共同作業を通じて触れ合うことは、老若世代双方にとっても、社会的有能感を高める好機となることを実感した。異世代間の交流の機会は、地域で行われることは様々な制約(場所・時間・団体・行政など)から案外と難しい。その意味で、まずは学校や大学という学びの場で、授業や講義や演習を通じて、意図的、計画的に実施されることが先決であると思われる。

 


その際の課題としては、世代間の交流を計れるような適当な授業科目をいかにして用意できるか、また高齢世代の授業参加者をどのようなに募れるか、単発ではなく継続して実施していくにはどのような配慮が必要かなどである。その際には、科目担当の教師が計画の中心となることは勿論であるが、各世代のグループをまとめる調整役が若者と市民の双方のグループに必要であり、また調整役間の緊密な打ち合わせの機会が、事前の準備として不可欠である。
 社会参加とは、当日の事業やプログラムに参加することだけでなく、そこに至るプロセス自体が社会参加であり、企画・調整・運営に関わる人たちの自己有能感を高める活動となる。(本実践活動の報告書「東海大学トコラボ実践活動報告集」も作成されているので、興味のある方は、ご照会ください) ( 第二分野コラム: 世代間交流 谷口)