2016年1月4日

運動習慣をつけるには、スモールチェンジの行動は有効か?


 東海大学健康クラブ活動の参加者を対象として、日々に実践している運動実施頻度と運動・スポーツの促進要因と考えられる「スモールチェンジ行動」の使用頻度との関係を調査した。

 対象者は、いわゆる運動行動に関するTTM理論のステージで、7割が実行期と維持期にある人々で、無関心期はゼロ、関心期は約1割であり、不定期だが運動をしている準備期と定期的に運動をしている実行期と維持期を合わせると、運動の実践者は約9割であった。

 筆者が運営に参画している東海大学:健康クラブのような総合型地域スポーツクラブに所属している運動好きな人は、どのような「スモールチェンジ行動」を採用しているのであろうか。

 スモールチェンジ行動とは、日常生活の中で、無理なく禁煙や運動や食生活の行動の変容を図るための心掛けのことである。

 当クラブの研究倫理審査会の承認を得て、参加者(108:40 人、女68)の運動を行うためのスモールチェンジ行動の活用度を調べた結果、次のような回答が得られた。

 実施率の高い順に紹介すると、「自分の体力に見合った距離や量を考えながら運動を行う」73%,「一緒に運動する仲間がいる]47%,「家族や友人に定期的に運動をしていることを伝えている」39%,「家で運動グッズを目につきやすい所に置いている」37%,「近くに運動する場所があるか事前に調べてある]36%,「定期的に健診を行い、運動ができるどうか体調チェックをしている」28%,「仕事の合間など、ちょっとした時間があれば体を動かしている」17%,「天候不良の時や寒暖の差の大きい日などに、運動するときの対策を立てている」11%,「運動に関する記録を,目につきやすい所に表にして貼っている」9%の順であった。性別の実施率に有意差が認められた項目は、「家で運動グッズを目につきやすい所に置いている」(25%,44%:全体37%), 「自分の体力に見合った距離や量を考えながら運動を行う」(85%,67%:全体73%)2項目のみであった。回答者の年齢は男66歳、女63歳であり、いわゆる高齢期の移行期にある健常な人々であった。

 このように、日々のちょっとした心がけが、運動実施への促進要因になっていることが明らかとなった。一回30分以上・週3回実施・3カ月以上継続する運動(3033運動と称している)が、神奈川県の運動実施率の数値目標であるが、実際はその段階に達していない地域が多い。本調査の実施地域である伊勢原市は、この3033運動の段階に達しているのは、約22%である。また同市内でも居住地区による実施率の格差も最大5%と比較的に大きい。国の健康作り運動である「健康日本21(第二次)でも、運動習慣に限らず、栄養・休養の健康づくりの対策や健康寿命の地域間格差を少なくすることが課題になっている。

(谷口。第一分野・健康・スポーツのコラム)

エイジズムと自己有能感


 筆者は、前期高齢期に入った団塊の世代である。

 ある小さな学術学会の常任理事を担っているが、昨年の理事改選後の仕事は、ほとんど無くなってきた。一応、選挙で選ばれた理事なので、無碍にその席を外す訳にも行かないというのが、執行部の苦慮しているところであろうか。

 もう一つの、やや大きな学術学会では、今年の役員の改選期に、ここ数年間一緒に仕事をしてきた仲良しの先輩や後輩の後押しもあって、10数年ぶりに役員選挙に挑戦した。第一次の社員(評議員)選挙には運良く当選したが、第二次の理事選挙には、見事に落選した。

 もう一つ、全国では最大規模の職能団体を誇る協会の地区役員選挙の理事選に挑戦した。図らずも、現役の有名大学教授の方と、ひとつの分野理事の席を競うことになってしまい、これも41の得票差で、見事に落選した。

 ところで、企業には、二つの定年があるとのことである。つまり正規の定年退職に先立つ10年前に、役職定年が訪れるとのこと。いわゆる平の社員として、かっての部下であった上司の下で働くことになるらしい。

 老人ホームや老人病院に入居・入院すると、その人が自宅にいた時よりも、早々に気力が落ちて、心身ともに衰弱が早まり、死期が早まるものらしい。自尊心を損なう機会が多いことが一因と想像される。

 老人福祉施設で働く介護職員の年間離職率は、一般企業の年間離職率の二倍近くに登るらしい。きつい・汚い・給料が安い・健康に悪いなどの4Kと称される職場は、介護の社会的位置(ポジション)や地位(ステイタス)が低く見積もられている傾向にあり、介護者に元気が出ないのだ。

 心理学の用語に、自己有能感という用語がある。まだまだ他人様や社会のために貢献できるという自尊心に裏付けられた自信のようなものと定義されている。

 そして、生きがい研究や上手に年を取る(サクセスフルエイジング)ための研究では、この自己有能感を高めのが良いとされている。

 一般社会の側に、ある年齢に至るともう一線から退くのが当然という暗黙裡の同意があり、個人の生活意欲を削ぐ結果となっていることも否めない。これをエイジズムと称している。自己有能感を低める社会のシステムが厳然と支配していると言っても過言ではない。体は元気・心が萎えるという構図である。

 駅前のコーヒーショップには、一見して定年退職後間もないと思われる人たちが、新聞や単行本を片手に、暇を囲って長時間滞在されている。彼らの知力や生活技能を発揮できる場が、地域に用意されていないのだ。

 このような社会情勢の中で、人の生きる意欲を高めるには、どのようにしたら良いのか。

社会の側に、自己有能感を高めるための役割づくり、生きがい醸成の場づくりが必要となろう。真の健康長寿を維持するための喫緊の課題である。一億総不活発社会に陥らないために。(谷口、第二分野・教育のコラム)

新刊書籍の紹介


 この度、日本応用心理学会企画『現代社会と応用心理学』(全7巻)が刊行された。日本応用心理学会理事長の「刊行にあたって」という序文によると、応用心理学会の第一回大会が1946年に開催された以来、本年(2015)まで計80回大会が開催されており、学会設立以来、長い歴史を重ねているとのこと。今回、応用心理学の関係領域のなかから、現代を象徴するトピックを取り上げ、学会企画として上梓することになり、ついに本企画の全7冊を刊行するに至ったとのこと。

添付の書籍の表紙写真は、その第7巻目の著書「高齢社会」(12/20/2015刊行、福村出版)である。応用心理学会常任理事の内藤哲雄氏と玉井寛氏の編集になるもので、トピック1からトピック24まで取り上げられている。本セミナーの共同運営者である谷口幸一がトピック1「現代社会と高齢化」を、また同じく所正文がトピック6「高齢者の交通安全」を執筆している。全体を通読することによって、現代の心理社会的分野の老年学の課題の全容が明らかになるものと思う。老いの生活課題を見通すのに役立つと思われる。

Washington,D.C. 2015.11.5.6 snaps 関係者の学会活動

Washington,D.C. 2015.11.5.6 snaps  関係者の学会活動 その1

Washington,D.C. 2015.11.5.6 snaps  関係者の学会活動 その2

経営者の経営理念は労働環境に大きな影響を与える

参考記事

 2008年にワタミグループの居酒屋「和民」で、女性社員が入社2か月で過労自殺し、遺族が損害賠償を求めていた裁判で、創業者で現在は参議院議員を務めている渡辺美樹氏らが約13千万円を支払うことで和解が成立した。渡辺氏は自身の法的責任を認めて謝罪したほか、ワタミは労働時間を正確に記録し、未払いの残業代を支払うなど、労働環境の改善策も和解内容に含まれているという。

 そもそも、なぜこのような悲劇が起きてしまったのか。渡辺氏はワタミを一代で大企業に育て上げ、食品宅配や介護事業にも進出するなど、優れた経営者であることは間違いない。その一方で、社員に過酷な労働を科すことでも知られており、「24時間365日死ぬまで働け」とまで言われていたという。ワタミはブラック企業という言葉が普及し始めた当初からそのように認識されており、元祖ブラック企業ともいえる存在であった。

 渡辺氏は自身が過酷な労働を経て成功したという経験から、人間はがむしゃらに働くことで幸せになれると信じ、それを社員にも押し付けていたのではないだろうか。しかし、すべての人間がそのような労働に耐えられるわけではない。自分に出来ることは人にも出来るはずだという思い込みが、今回の出来事につながったのではないか。

 逆に、経営者が社員のことを大切に思っているならば、その会社の労働環境も良いものとなるだろう。しかし、労働環境が経営者によって左右されるというのでは、リスクが大きすぎる。労働環境が経営者の影響を受けすぎないように法律などの環境を整えていくことが必要である。(鈴木聡志)

2015年12月20日

自動運転の技術開発と検討すべき課題


人が自動車を運転するという行動は、刺激を知覚し(認知)、その意味を読み取り(判断)、それに対する適切な行動をとる(操作)という一連の機能から構成されている。
まず認知機能とは、運転に必要な情報を摂取する機能を指す。運転に必要な情報の80%は目を通して摂取されているため、基本的に視覚機能を通して行われると言っても良い。そして、視覚機能は加齢の影響を最も早く受け、40歳代後半から低下し始める。
次に判断機能とは、情報内容を適宜分析し、運転行動に結びつく意志決定を行うことである。例えば、赤信号が点灯していれば車を止めるという意志決定を行う。また、交差点で対向車が迫っていれば、その距離とスピードを瞬時に把握し、自車両の右折が可能であるかどうかの意志決定を行う。
そして、操作機能とは、意志決定に基づき、運転行動に直結する操作を行うことである。具体的には、ブレーキを踏む、ハンドルを切るといった行動を指す。
 自動車の運転に求められる「認知-判断-操作機能」は、心理学的には、筋能力と感覚との調整(協応)能力といった「サイコモーター特性(精神運動能力)」で説明される。サイコモーター特性は、加齢に伴い劣化することが一般的に知られている。そのため、認知機能に関しては、高性能カメラ、レーダーなどで車の周囲を360度常にチェックすることにより、障害物や道路標識を発見したり、あるいは他車との距離を計測することにより、人間の見落としをカバーしている。
 判断機能についても、カメラやレーダーからの情報を人工知能で高速処理し、交通ルールや地図データと照合し、車の走行や停止の意志決定に結びつけていく。
 操作機能に関しては、人工知能の判断をもとにハンドル、ブレーキ等が電気信号で瞬時に正確に操作され、ドライバー自身は全く運転操作に関与しなくても良いことになる。
 したがって、自動運転システムとは、自動車に各種センサーや、人工知能を備えたコンピューターを取り付け、人間が操作することなしに自動走行する技術を指すと言える。
 これによって、免許を失効した高齢者や体の不自由な人が、自動車で移動できるようになったり、運転者の単純ミスによる事故が減り、安全性が大幅に向上する。さらに、渋滞軽減なども実現可能になる。こうした交通社会への移行が徐々に進んでいるが、2020年代以降には本格化すると見られている。
 しかし、自動運転社会がもたらす新たな問題も同時に指摘され始めている。私は次の4点を指摘したい。

(1)ジュネーブ条約見直しの議論
ジュネーブ条約とは、自動車を含め、人命を左右する乗り物にはパイロットやドライバーが乗っていないといけないとの合意事項を各国で批准したもの。世界中に9億台走る自動車分野で、自動運転技術が急激に進めば、条約見直しの議論が高まる可能性がある。

(2)事故責任の帰属先問題
事故責任の大半が、従来は運転者に帰属し、自動車メーカーに責任が及ぶことは稀であった。しかし、自動運転車の場合、車の所有者や同乗者に対する責任は問いにくく、 製造元責任が問われる可能性が高い。これを自動車メーカーが受け入れるかどうかが、今後の焦点となる。

(3)セキュリティーとプライバシー問題
 個人走行データが自動車メーカーや警察に送られ蓄積されることになる。IT技術に長けた人物が、自動車に設置された各種センサーや、人工知能を傍受することにより、新たな犯罪が起こる可能性がある。

(4)市場受入れの条件としての提案
 以下の2点を提案したい。
安全性、セキュリティーの面での技術が、一定水準を超えるまでは市場導入は認めない。ハードルを高く設定し、技術者の方々にはそれを超える努力をして頂きたい。
70歳(あるいは65歳)以上ドライバーに対して、優先的に自動運転車を低価格で販売する。ただし、自動運転によるマイカー走行は、地方エリアに限定し、公共交通機関が充実している都市部では認めない。この政策が、高齢者の地方移住をもたらし、地方創生に結びつくことを期待したい。(所正文)

2015年11月21日

21世紀日本研究セミナー第9回開催案内


●開催日程:
    20151128日(土)
       セミナー:1430分~17時頃まで
       懇親会 :1745分~19時半頃まで

●開催場所:
 セミナー:立正大学品川キャンパス・9号館9B16教室
 懇親会 :立正大学品川キャンパス・教員レストラン(2号館12階「芙蓉峰」)

●セミナー内容:
【交通・生活系】「高齢ドライバー調査を受けて」

●プログラム:
開会挨拶:1430分~1440分(10分)
 所正文(立正大学)
話題提供:1440分~1540分(60分)
【テーマ】高齢ドライバー調査研究報告
 話題提供者・学生(1)1440分~1455分(15分)
 話題提供者・学生(2)1455分~1510分(15分)
 話題提供者・学生(3)1510分~1525分(15分)
 話題提供者・学生(4)1525分~1540分(15分)
質疑20分:1540分~1600
休憩10分:1600分~1610
指定討論:1610分~1650分(40分)
【主な内容】高齢ドライバー研究の方向性
 指定討論者:所正文(立正大学心理学部)
全体討論:1650分~1710分(20分)
次回案内・記念撮影:1710分~1725分(15分)
セミナー閉会

●懇親会:
  会場:立正大学・教員レストラン(2号館12階「芙蓉峰」)
  日程:1745分~19時半頃まで
  会費:社会人(3000円),学生(1000円)