中高年・キャリアの長期化・生涯現役
アウトライン:キャリアとライフ(2)
(以下、解説 : 所 正文)
2.中高年のキャリアとライフ
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団塊の世代を含む60~64歳の5割超が
65歳以降も仕事を続けたいと考えている。
70歳以降でも3割近くが仕事をしたいと望んでいる。
かつては、「給料がなくても働きたい」という人も少なくなく、
会社人間として仕事で満足が得られるように生きてきたため、
定年後に趣味で同じ満足度を得られる人はむしろまれであったと言える。
しかし、最近では、仕事をする理由として、
「生活費を得るため」(63.8%)をあげる人が最も多く、
公的年金のみでの生活が厳しく、
生活のために働かざるを得ない現実を窺うことができる(日経新聞2012.2.22)
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生涯現役の人の4つの特徴とは、
・人生に対して積極的な姿勢があること、
・対人関係力が高いこと、
・このスキルでは負けないといった
「売り物」(高い専門的能力、例えば資格)を持っていること、そして、
・自分から売り込んでいること(ただし自分の人脈の範囲内)、である。
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キャリアの長期化に伴い、求められる専門的能力も変容する。
そのため、専門的能力を高めていく研鑚のための努力がとりわけ重要である。
働きながら新しい分野を学び、隣接領域にシフトしていくことも
キャリアの複線化へ向けて効果的だ。
その際、長年の人的ネットワークは大変役に立つ。
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「同一業務での継続雇用」を多くの人が希望する。
しかし、それを実現できる人は極めて少ない。
一方、「同一業務での独立自営」、すなわち一人コンサルになって、
現在の仕事を請け負いで引き続きやっていくスタイルを取れればベストである。
ただし、その場合、無理をせず、
ローリスク・ローリターンであることが原則となる。
また、発展型として「新規事業を独立自営」という方法もある。
この場合には、40歳代後半からから
社外で通用する専門的能力を身につける努力を始めておく必要がある。
(日経新聞2012.9.28)
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人生80年時代に生きがいを持って生きるためには、
職業生活以外にそれと同等に精神エネルギーを投射する価値領域を見出したい。
いわゆる複線型人生の推奨である。
できれば40歳代から、遅くとも50歳を過ぎた頃から
新たな自己実現の道を模索したい。
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「自分以外の人のことを配慮して生きてきた、
その人の『時』こそが、その人の寿命の長さではなく深さである」
ということを、若く散ったが、よく生きた友から学ぶと。
そして、自分中心に生きてきた時間に、
こうした『時』を加える努力をすることが、
生きがいを持つことに繋がる。
他人に対する思いやりは、自らに対しても幸福感をもたらす。
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他人が関心を持ってくれる。
見捨てられ、忘れ去られているのではない。
そうと知ることが大事である。それで人間で生きていける。
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現代人は、巨ゾウ並みのスケールで、ネズミよりも速い時間を生きている。
しかし、脈拍などの体のリズムは石器時代とほとんど変わらない。
超高齢社会においては、急速調のアレグロの価値観から、
緩徐楽章のアンダンテに転じることが重要である。
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人間はそれぞれ認知的フィルターをもっており、それによって世界を解釈している。
認知的フィルターに歪みがあれば、
否定的感情(否定的自動思考)がもたらされ、うつ気分にさせられる。
そこで、否定的自動思考を心理療法のプロセスにおいて本人に意識させ、
次に認知フィルターの歪みを修正することを通して、
人格や行動に健全な変化をもたらすところに心理学の役割が存在する。
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たとえ死刑囚といえども、
臨床家はその内面に微かな光(ともしび)を見いだすことができるという。
その「ともしび」こそが、まさに人間としての「生きる意志」であり、
それが大きな炎として全体に広がれば、
その人物は真人間として生きることができたのだという。
残念ながらその人物は生きる意志であるともとびに
気づく(気づき,awareness)ことができなかった。
大きな炎にならなかったのだという。
自己認知に関わる重要な知見である。
[引用文献]所正文著『働く者の生涯発達:働くことと生きること』
白桃書房,2002年.
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