2016年5月12日

フレイル

高齢者の状態像として「虚弱」と訳されてきたフレイルティ(Frailty)に対して、
平成26年5月日本老年医学会から、新たに提唱された言葉がフレイルである。
筋力の低下や俊敏性の低下、転倒のしやすさのような身体的側面、
認知機能障害やうつなどの精神・心理的側面、
一人暮らしや経済的困窮などの社会的側面を含む概念である。


従来より注目されてきた問題に対し、
このように新たな用語の提唱する背景には、
加齢に伴う身体機能の衰えと虚弱状態の顕在化は
ある程度不可避的なものではあるが、
その状態は適切な介入がなされればさらに深刻な要介護状態に予防でき、
健常な状態に戻る可逆性を有していることを強調したい、
という考えがあるという。
つまり高齢者が健常な状態から機能障害への移行状態にあることを
これまでのように「虚弱」、「虚弱化」、「虚弱状態」という言葉で表す場合、
加齢による衰弱が始まったのであるから、
その衰えはもう止めることは出来ないという印象を与えていることを危惧し、
その改善を意図しているのである。

新しい用語を用いることが必ずしも適切かどうかは議論が必要だが、
高齢期の心身の変化に対する予防の観点が
正しく周知されていくことが必要であり、
医療・介護に携わる専門職は当然、
食事や運動などフレイルに対する一次、二次予防の重要性を
認識し介入することが求められる。
(坂井)