2016年5月30日

介護とセクシズム


 介護者の離職率は高い。その理由の一つは、介護の担い手が女性が大半であるという事実も否定できない。
 介護とは、家事の延長、女性の仕事、家事は女性で主婦であれば誰しもやっている仕事であり、それに大金を払う必要はない。この思い込みは、介護者の仕事の社会的位置づけと評価に反映している。
  被介護者=利用者は、女性が圧倒的に多く、超高齢者ほど女性が多くなり、したがって自ずと認知症者も女性が男性よりも多くなる。黒人で、女性で、かつ高齢者は、三重の差別を受けると言われる。このような差別は時代錯誤であるが、とくにセクシズムとエイジズムは、日本にも厳然と存在していることも事実であろう。差別というよりも、区別と言った方が的確かも知れない。つまり、この分野は男性のもの、あの分野は女性のものという区別意識である。その領域を侵害したときに非難が起こるのだ。介護や家事や保育領域は、女性の領域で、その分野に対する社会的位置づけや地位が、従来から低く見積もられていたという歴史的背景がある。
 逆説的に言えば、介護者の大半が、男性であることが、介護の社会的評価を高めることに繋がるのではないか。男性は一家の柱、女性は家庭で育児と家事という従来の旧家族制度に根差した家庭観・社会観から抜け出せないでいる。介護男子スタディプロジェクトの試みは、そのような社会の介護に対する狭小な概念を払拭することを目指して新たに発起された団体という。

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「健康科学部社会福祉学科では12月4日に伊勢原キャンパスの松前記念講堂で、2015年度学科講演会「『介護男子スタディーズプロジェクト』ってなんだ!?」を開催しました。同プロジェクトの呼びかけ人である社会福祉法人愛川舜寿会の馬場拓也さんと社会福祉法人福祉楽団の飯田大輔さんが、150人の聴衆を前に、介護の現実を踏まえつつ、「現状に問題があるからこそ、取り組む価値がある」と語り、「福祉の現場では一人ひとりの活躍の可能性がとてつもなく大きい。福祉の現場を変えていくのは皆さんです」と力説。「介護はクリエイティブな仕事』という新たな概念で、介護の明るい未来について語っていました。
●●「 介護男子スタディーズプロジェクト」は、全国20の社会福祉法人で組織されたプロジェクトです。日本で介護の仕事に従事する人の約8割が女性という現状の中、男性が快活に働いている姿を発信することで介護に関する社会的な議論を惹起し、既成概念や印象、評価を変えるきっかけをつくろうと創設されました。より多くの人に興味を持ってもらうため、あえて「男子」という言葉を使用。2015年9月には男性に焦点を当ててリアルな介護の現場を写真で紹介するとともに、多彩なジャンルの識者による論考を掲載した『介護男子スタディーズ』を自費出版(価格:2,160円(税込),136ページ,()アマナ発行)しています。」(東海大学健康科学部HPより引用)

 (第二分野 谷口 5月分コラム))