労働に関する問題は、主に一般企業に勤める会社員に関することが取り上げられることが多い。「ブラック企業」は、劣悪な労働環境の企業を表す言葉として近年すっかり定着した。また、最近では「ブラックバイト」という言葉も登場し、正社員だけでなくアルバイトの労働環境にも注目されるようになってきた。
一方、あまり注目されることが無いのが、学校の教師の労働環境の問題である。教師の労働環境は、拘束時間が長い上に、家に仕事を持ち帰らざるを得ない、というかなり悪い状況にある。さらに、教師であれば無償でも奉仕して当たり前という世間の風潮や、父兄からのクレーム対応など、精神的負担も大きい。
その負担の大きな原因となっているのが、部活である。ある中学校では、教師は「全員顧問制」となっており、必ず何らかの部活の顧問をしなければならない。そのような法令は無いが、昔からの慣習でそうなっているらしい。そして、早朝練習や放課後練習、試合がある日は休日も一日中拘束されるにもかかわらず、顧問は基本的に無給である。そのような状況に対して、当の教師たちが行動を起こし、教師の顧問を選択制にするよう署名運動を始めた。これに対しては最初は「昔からあったことだ」という反発の声が多かったが、徐々に共感も広まっているという。
ブラック企業問題に対しても、日本の企業は昔からそうだったという意見もある。だからこそ、それに対する改善の声が挙げにくいという側面もある。しかし、昔から続いているというだけで、それが良いこととは限らない。伝統であろうとも、改善すべきところは改善していかなければならない。(鈴木聡志)