地域の老人クラブ会員を調査対象として、日々の運動習慣の程度と転倒回数とうつ傾向について調査した。本調査は、同一の対象者に約1年の間をおいて2回実施された。初年度(2012年度)の調査対象者の内訳は、女性で783名(49.9%)、男性785/名(50.1%)
の合計1,568名であった。
年齢区分別にみると、女性で60歳代183名(23.3%)、70歳代445名(56.8%)、80歳代155名(19.8%)であった。他方、男性では60歳代166名(21.1%)、70歳代485名(61.8%)、80歳代134名(17.1%)であった。継続的に定期的な運動習慣を持っているか否かを知るためのTTM理論(Transtheoretical model:意図的な運動を生活の中にどれだけ取り入れているかを調べるためのステージ理論)に基づくステージ:実行期・維持期)の人のグループでは、過去1年間に3回以上転倒した人の割合は、男性で9.6%、女性で7%であった。一方、運動を意図的に行っていないステージ:関心期・無関心期の人のグループでは、過去1年間に3回以上転倒した者が男性で19%、女性で18%であった。このように運動を定期的に実施している人たちと実施していない人たちとでは、年間に3回以上転倒する頻度が2倍以上の差があった。また調査の初年度に、過去1年間に転倒しなかった(転倒回数・0回)人のグループで、次の調査2年目(2013年度)においても転倒回数・0回の人の割合は、男女ともに年代があがるにつれ、その割合は減少していた。特に80歳以上では、男性で5割、女性で約6割に減少していた。高齢になるほど、普段の生活の中で、転びやすくなっていることが、これらの結果に表れている。(文科省科研費補助金基盤研究C・H23-25: 研究代表:谷口幸一・安永明智)
健康日本21・第二次(第四次国民健康作り運動の別称)に関する国の調査結果を見ると、要介護状態になる原因のなかでも、その約1割が「骨折・転倒」である。日頃の生活で、足腰を鍛える身体活動(ロコモティブシンドローム:運動器症候群)に心掛けることが必要である。足腰の筋力を鍛える日々の生活で無理なく行える運動の例として、Figure1.に示す運動は有効である。(資料提供:(株)サンライフ企画・公益財団法人・健康体力づくり事業財団,2014)
Figure1. ロコモティブシンドローム予防のための運動