2015年5月13日

キーワード:MCI(軽度認知障害)

近年、認知症と共に、MCIという言葉が使われるようになった。
MCIとはMild Cognitive Impairmentの略で、軽度認知障害とも言われる。
認知症とは区別され、日常生活への支障はないが、
一部の認知機能の低下がみられ、
一定の割合でその後認知症への進行する可能性がある状態とされる。

「健忘型」と「非健忘型」に分類され、その特徴や予後が検討される場合が多い。
「健忘型」は記憶障害が特徴で、アルツハイマー型認知症に進行することが多い。
「非健忘型」は、記憶障害ではなく失語や失行などの症状が見られ、
前頭側頭型認知症(ピック病など)レビー小体型認知症に進行することが
多いと言われる。

グレーゾーン、発症の予備軍という言われ方もしているが、
進行した後の根本的な治療が見つかっていない認知症にとって、
この段階での発見と、予防によって進行を抑えることが、
重要とされている。
(坂井圭介)

介護福祉士の資格取得方法の見直し

介護福祉士の資格取得方法の見直し―厚労省の社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会において、
最近次のような方針が示されました。

○平成28(2016)年度から、
養成施設卒業生(専門学校・大学の養成コース)については、国家試験を実施する。

○但し、平成28(2016)年度から、平成32(2020)年度までの
養成施設卒業生(専門学校・大学の介護福祉士養成コース)については、

①卒業から5年間、暫定的に介護福祉士資格(暫定介護福祉士)を付与する。

②その間に、以下のいずれかを満たせば、その後も引き続き介護福祉士資格を保持できること。
 (a)卒後5年以内に国家試験に合格すること、を条件とする。
 (b)原則卒後5年間連続して介護の実務に従事すること、を条件とする。

○しかし、平成33(2021)年度以降、養成施設卒業生については、
国家試験に合格することが介護福祉士の資格取得の唯一の要件となること、
になりそうです。

以上のように、介護を担う専門士も、
ついに国家試験一本の資格制度に移行することになります。
3Kと言われる介護の仕事も、
その業務内容の専門性だけはグレードアップするようですが、
それを担うスタッフの経済的保障や社会的位置・地位・役割が同時にアップしないと、
人材の定常的確保も難しいかもしれませんね。
皆さんは、どのように思いますか?
(谷口)


キーワード:プラス・テン(+10)

厚生労働省が進めるActive Guide 「健康づくりのための身体活動指針」(2006)に
盛り込まれた「毎日10分余計に身体活動を動かすことから、始めましょう」
という標語である。

65歳以上では40分、18~64歳では60分、
毎日からだを動かしましょうということである。
そのことで、脳卒中、がん、
ロコモティブ症候群=運動器症候群、鬱、認知症などになるリスクを
下げることに寄与すると考えられている。
(谷口幸一)


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2015年5月12日

キーワード:コグニサイズ

国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)が開発した
認知症予防に、体を動かしながら脳を鍛える認知症予防エクササイズを
コグニサイズという。

「コグニションcognition (認知)」と「エクササイズexercise (運動)」を
かけあわせて作った新しい用語で、
認識課題と運動課題の二つの作業を
同時におこなう(デュアルタスク)ことが特徴である。
運動で体の健康を促すと同時に、
脳の活動を活発にする機会を増やし、
認知症の発症を遅延させることを目的としている。

具体的なエクササイズの例をみると
国立長寿医療研究センターのコグニサイズ冊子PDFへのリンク
自宅や運動教室で
気軽に行いやすいトレーニングとして開発されていることがわかる。
体と脳への適度な負荷と、
短時間でも毎日実施し、習慣にすることが大切であるとされている。

(坂井圭介)

2015年5月11日

世代間交流




(2014.8.29 江東園で撮影)

東京都江戸区にある社会福祉施設「江東園」では、
高齢者施設・養護老人・特別養護老人ホームと保育園が同じ敷地に合築されており、
幼老の世代間の交流が日々の園活動として行われている。
園児とその親が二世代に渡って通園している親子もいる。
施設しては、そのことが一番うれしいことと言う。

毎年、世代間交流コーディネーター養成講座(日本世代間交流協会主催)が、
この江東園で行われている。
お互いの世代同士のふれ合いを通じて、
高齢者の生きがいづくり、
園児の老いの世代に対する自然で穏やかな感性が養われている。
(谷口幸一)

運動の加齢サイクル


身体が自由に動き、自分の行きたいところに自由に行ける生活こそが、
人の基本的で最も重要な身体的条件である。
しかし、高齢になると歩行は何とかできても、
一人暮らしなどの自立した生活を送る能力に障害が出てくる人が多くなってくる。
移動の不自由さは、体力低下や生理機能の減退に止まらず、
心理・社会的活動にも支障が生じてくるという悪循環を生む。
高齢になって運動をしないことが心身に与える悪影響については、
さまざまな研究や仮説が存在する。

バーガー(Berger,B.G 1989)の「運動の加齢サイクルというモデルによれば、
加齢につれて日常生活に占める運動量が減少すると、
肥満、筋力低下、精力減退が起こり、さらに老いの自覚が増し、
ストレスや不安・抑鬱の増加と自尊心の低下が起きる。

このような心身の不調は、一層の身体活動の減少に導き、
やがて予備体力の減退から
心臓病、高血圧、各種の痛みなどの慢性病(生活習慣病)が発症すると解説している。
このような加齢につれて生じやすくなる「運動の悪循環」を断ち切る個人的努力と共に
社会的な啓蒙・指導が必要とされる。
老いるほど生理的には日々体を動かさなくなり、運動不足病に陥るが、
意識レベルではさほどの運動不足感は感じていないと傾向が認められる。
意図的に運動への動機づけを高める必要性が認められる。
(谷口幸一)

領域紹介(医療福祉・教育)


 1950 年には日本人の平均寿命は50 歳であり、
65歳以上の高齢者の割合は5%に過ぎませんでした。
しかし2014年現在、高齢者人口は25%超、
2030 年には総人口の1/3 を占めると推測されています。

 現在の日本では、平均寿命は男子80 歳、女子86歳を超え、
いよいよ人生90年型の世界となりました。
人の“老い”が個人の問題を超えて社会の問題として認識され、
人の「老化」が科学や医学の問題としてとりあげられるようになったのは、
近々この50 年以内のことです。
国民医療費も年間40兆円に近づき、超高齢者も急増し、
認知症者も450万人を超え、要介護者も高齢者人口の20%に近づき、
介護保険料月額5千円を超えています。

 また地域活動にうまく溶け込めない高齢者も多く、
高齢者の自殺者も年間1万人を超えている等の実態が在ります。
このような社会的・国家的課題の解決には、
各問題の解決に向けた適切な政策が実施される必要があります。
そのためには、子ども・若者世代から、現代の超高齢社会の現実を知り、
親や祖父母世代の人生課題に触れ、
家庭や地域の共通の問題として共に考える資質を養成するエイシング教育が不可欠です。
そのような観点から、様々な話題を提供し、
多世代の参加者間の交流を通じて、ともに考える機会としたいと思います。
(谷口)