最近ありもしないことを疑うようになった。
急に怒り出す。今話したことを何度も聞いて困る。」
認知症の話題が一般的になり、その症状についてもよく話されるようになった。
しかし、これらのような認知症の症状は、
一括りにして扱われるべきではない。
「今話したことを忘れる」のように、
記憶障害など、脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状を、
認知症の中核症状という。
他にも判断力の低下、実行機能障害など、
これらは直接起こる症状であるので、
程度の差はあれ、すべての人に見られる症状である。
一方、お金や物をとったなどと疑う(物盗られ妄想)や
穏やかな人がいつも怒っているようになった(感情表現の変化)などの症状は、
中核症状に伴い、元々の性格、環境など
様々な要素が絡み合って起こっているもので、
このような行動・心理症状を「周辺症状」と呼ぶ。
近年はこれをBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)
と表すようになった。
BPSDは、認知症の理解不能な困った行動と捉えられてきた。
中核症状自体の改善は難しいが、
BPSDについては、対応や環境を変えることで改善することがある。
本人の世界やその行動の理由を考えて、
何がその行動を引き起こしているのか理解をしながら
関わることが大切である。
(坂井圭介)