2015年4月20日

領域紹介(交通・生活)

 部門4は、「交通の窓」から21世紀の日本社会を展望していきます。「交通は社会の縮図」であるとしばしば言われます。超高齢社会における問題が、交通現場においても顕在化しています。一例として、認知症ドライバーの問題があげられます。かつては、認知症を患った人が自動車の運転をすることなどは考えられず、運転免許更新の際に認知症の簡易検査が、一定年齢以上の高齢者に対して一律に実施される時代が到来することを、誰が予想したでしょうか?

 日本や欧米先進諸国では、多くの国民が自動車を持つことによって、ルーラルな地域に住んでいても、都市型のライフスタイルをとることが可能になりました。そして、皆が無秩序に車を使いすぎているために、交通事故や混雑、さらに地球温暖化をもたらし、結果的に人間社会全体の利益が損なわれております。加えて、高齢ドライバーが激増する近未来において、運転免許を手放さなければならない人が確実に増えていることも自動車文明の新たな課題です。 

 我々が生きる21世紀社会では、自動車文明への過剰適応を見直さなければなりません。既成の枠組みの中で効率性、利便性を追求する従来型の〈進歩の思想〉は限界にきており、これまで当り前とされてきたことを原点に立ち返って、その是非を検討することが、21世紀社会では、個人においても社会においても必要になります。こうした視点が「文化・文明論的な構造転換」であり、部門4の課題です。 〈執筆:所正文〉