労働者の処遇とは、本来組織に対する貢献に見合うものではなければならないが、1950年代から80年代までの日本企業の終身雇用・年功序列制度下の従業員の場合、彼らの処遇は、必ずしもその時点での能力や生産性とは一致せず、特定の期間ごとで見れば過払いや不足払いであった。ただし、全労働期間である40年を通してみれば均衡が保たれていた。こうした関係を入社時から定年退職時まで模式化したものが「先払い・後払いモデル」(若林,1987;所,1989)である。このモデルでは、過払い期である若年層と高年齢者層で満足度が高く、不足払い期の中堅層では満足度が低下し、勤続年数と満足度との関係がU字型カーブになることが特徴的である。〈解説:所正文〉
図1 先払い・後払いモデル